代表選手のシステム対応能力について

 かつて岡田監督について、MVPの小笠原もJリーグ得点王の前田遼も起用しない、という批判があった。
 その批判は単にスペック主義ではないか、と思ったことがある。CPUの処理能力が高ければいい、メモリがでかければいい、ハードディスクも大きいほうが。パソコンならそれでもいいが。いや、パソコンでも家電製品でも、使い勝手というものがあるだろう。
 チャンスを与えなかったのならまだしも、小笠原も前田遼も一度は呼ばれている。能力はもちろん高いが、彼らは何か理由があって切られたのだ。

 岡田監督は選手を切る時に理由は言わない。それは矜持か人心掌握術かは知らないが、こちらは推定しかできない。
 それは代表のやり方に合わせられるか、というところではなかったかと思う。
 これは例えばの話なんだが、代表に初めて呼ばれた選手がこんなことを言ったとする。
「自分の特長は攻撃だと思うんで、そこをアピールしたいと思います」
「所属チームのプレーを見て呼ばれたと思うんで、代表でも普段の力を出したいと思います」
 そうしたことを言っていた選手が二度と呼ばれなかったりする。監督としたら、
「彼が、攻撃が得意なのはわかっている。問題は守備がどれだけできるかだ」
「彼は所属チームではこれこれの位置で活躍している。だが、別の役割を与えたらどうだろうか」
そんなことを考えていたのかもしれない。

 代表にはコンセプトがあった。
 日本人の俊敏性を生かす。そのため、前線には特にそうした選手、岡崎・大久保・松井・玉田などを配置する。ボールを取られたらすぐに取り返してショートカウンターをかける。
 センターバックには屈強な中澤と闘莉王が跳ね返し、ボールを中央に送る。中央にはパス精度が高くアイデア豊富な遠藤と俊輔が中心。やや後ろに長谷部が控え、サイドにボールを散らしビルドアップする。右サイドは俊輔と内田で崩していき、走力の高い長友が左サイド。ゴール前には俊敏性を生かすためにアーリークロスを入れていく。そこに本田が加わった。彼は二列目でゴールを狙う。
 だが、このコンセプトは瓦解した。俊輔は足首を痛め、遠藤の調子は上がらず、本田は連携が不十分で、岡崎は相手の能力が上がると通用せず、内田も守備の不安がぬぐえず、中澤までが失点につながるミスをする。
 代表はシステムを変更した。
 俊輔を外し、阿部をアンカーに起用し、右サイドは内田ではなく守備力に優れた今野を入れ、今野が怪我したら駒野を配置し、岡崎を外し、どうしても連動しなかった本田は最も連動の必要ないワントップに。

 この大変更がなぜうまくいったのだろうか。旧代表コンセプトのために集められたメンバーであったのに。
 いや、旧コンセプトが遂行できるメンバーだったからこそ、うまく行ったのではないだろうか。所属チームのやりかたに固執した選手は、どんなに個の能力が優れていても選ばれなかったのだ。23名に選ばれた彼らは、一度所属チームとは違う旧コンセプトサッカーに合わせている。そこで対応能力を証明しているのだ。
 だからこそ、コンセプトが変更されても柔軟に対応できたのだろう。

 W杯システム(阿部アンカーシステム)にするなら、もっと良い23名がいたのではないか、という疑問はあるかもしれない。しかし、私はその意見を取らない。
 岡田監督は、システムを変更しても対応できるメンバーをすでに選んでいた、と思うからだ。

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