日本1-1オーストラリア(生観戦) ザッケローニ監督が盛り上げた祝祭空間

 券が当たった。
 確率10分の1などと言われていたオーストラリア戦チケットが、当たるとは思わなかった。私はくじ運が良くない。懸賞など当たった記憶が乏しい。しかし、金を払うくじなら話は別なのか。
 オークションに出したら何万円になるか、と考えた。もちろん売る気はなかった。何万円出しても見たい、と思われている試合を見に行くほうが、何万円よりも価値がある。

 埼玉スタジアムは6日前に行ったばかり。あの日はジャンバーを着ても、うすら寒かった。だが、この日はジャケットもいらないくらい暑い。6日間で埼玉は春から夏に切り替わったかのようだ。
 席はバックスタンド2階アウェー側。ゴールラインの延長線上あたり。着いたら両チームの練習が終わるところだった。日本代表選手達がホーム側のゴール裏に挨拶をしていたのが見えた。大歓声。
 観客数は発表によると62172人。それぞれに興奮状態の祝祭空間。ほどなくメンバーの発表。

 オーストラリア代表
GK: シュワルツァー、FW: ケーヒル(以下略)

 控えメンバーのケネディのところで大ブーイング。人気者だ。もっとも名古屋グランパスではお世辞にも調子がいいとは言えない。出て来ないだろう、と私は思っていた(実際、出て来なかった)。

 日本代表
GK: 川島、DF: 長友・内田・今野・麻也、MF: 本田圭・遠藤・長谷部、FW: 岡崎・香川・前田遼

 引き分け以上でW杯出場が決まるという大一番。ザッケローニ監督は不動のレギュラーで臨んだ。当然だろう。

 南風が吹いていた。オーストラリアから吹く風か。あるいはブラジルから吹いてきた風だろうか。
 試合開始。

 オーストラリアの出方が気になっていた。日本は勝ち点1でよい。さてオーストラリアは勝ち点3を狙いに来るか、それとも勝ち点1でもよしとしてくるか。
 後者だった。互いに後ろに人を残しつつ、隙を窺う戦いになった。最近ネットで言うところの塩試合、そんな気配濃厚だ。
 ただしここは祝祭空間。バックスタンドでも応援の声が跳ね上がる。ちょっとした好機が潰えれば嘆息、ちょっとした危機のなりかけでおののき、危機が去れば安堵の声。
 遠藤フリーキック。香川のシュート。クルースの抜け出し。実際に得点の匂いが漂ったのはそれくらいか。
 良いサッカーをしているのは日本。前で走り回ってロングボールの出所をつぶし、ゴール前では今野と麻也が競ってチャンスを作らせない。ペナルティエリア付近で無駄なファウルを犯さないことも徹底していた。
 もっとも、良いサッカーで勝てるとは限らない。過去のオーストラリア戦でもそれは証明されている。引き気味のオーストラリアディフェンスに手こずり、日本もなかなか好機を作れない。前半はスコアレスで終了。

 ハーフタイム、トイレが混むかと思ったがそうでもなかった。

 後半も状況は変わらない。おおむね日本がしたいサッカーをしている。香川や本田がペナルティエリア内に切り込んでくる。しかしなかなか点にはならない。時間は着々と進んでいく。
 72分、オーストラリア、ホルマンに代えてビドシッチ。
 はて、日本はどうするのか。得点も失点もしそうにない。日本は引き分けで良い。それなら膠着状態は望むところなのかもしれない。ひょっとしたら、90分近くまで、日本は交代をしないかもしれない。

 違った。

 79分、前田に代えて栗原。

 え?
 意図がわからない。なぜここでセンターバックが3人。3バック? 過去一度も成功していない3-4-3? この最終予選の、W杯出場がかかるオーストラリア戦で?
 フォワードに代えてディフェンダーだ。指示は、守りきれ、だ。フォーメーションはともかく、少なくともそれだけは間違いない。
 ザッケローニはイタリア人だ。ここ、という時にカテナチオ采配を見せることがある。
 だが、守りきる采配を日本は苦手とする。アジア杯韓国戦、ゴール前でベタ引きした日本は延長終了間近に同点弾を浴びた。古くは、加茂監督時代の秋田投入。あの時は……、
 いや、思い出を辿っている場合じゃない。
 危ない!

 右サイドをオアーに破られた。クロス、いや、そのボールは川島の頭上を越えた。これがわざと蹴ったのならとんでもないストライカーだ。
 82分、オーストラリア先制。

 慌てて日本は内田に代えてハーフナー。オーストラリア相手にハーフナー。高さのアドバンテージがどれだけあるのか。案の定、ハーフナーの頭にボールは飛ばない。日本代表選手達はハーフナーの頭を使いたくないのだ。そうとしか思えない。
 87分、岡崎に代えて清武。もう87分。
 本田シュート。コーナーキックになった。ショートコーナー。ボールが中に入った。

 何が起きたのか、遠くてわからなかった。
 人がごちゃごちゃしている。誰も倒されたわけではない。PKだ。隣の青年が叫んだ。マッケイがハンドをしていたのを私が知ったのは、試合を終えて携帯でニュースを見てからだった。
 蹴るのは本田だろう。本田だ。どうなる。ここでも真ん中に蹴るか。シュワルツァーは右に飛んでいた。
 同点。同点。

 0-0の塩試合で終わるのかと思われた。それがザッケローニ監督の采配で、劇的な試合になった。
 試合終了。
 日本代表、ワールドカップ出場決定。

 試合後のセレモニーを私は一切見ていない。変なデザインのTシャツも遠藤の叫び声も、見ていないし聞いていない。
 帰宅、という戦いが待っていたからだ。

 ともあれ、ほっとした。
 帰宅時、電車でオーストラリア人をみかけた。
 オーストラリアとの最終予選は、二試合とも引き分けだった。
 決着はW杯でつけようぜ、そう言おうとしてやめた。単に英語でどう言えばいいか、わからなかったからだ。

 試合後のセレモニーはこれからゆっくりテレビで観賞しよう。

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