岡崎慎司というオーラの無いエースストライカー

 岡崎慎司は先日のラトビア戦を終え、国際Aマッチで59試合に出場し、31得点を上げたそうである。
 これは釜本邦茂の76試合75得点(JFAの統計。FIFA統計では61試合55得点)、三浦和良の89試合55得点、原博実の75試合37得点に次いで、歴代4位に当たる。高木の27、和司の26、俊輔の24、高原の23、中山の21得点よりも多い。
 と聞いて、どう思うだろうか。

・いつの間にそんなに点を取ったんだ。
・59試合も出場していたんだ。
・2試合で1得点以上とは大したものではないか。

そんなところか。
 私の意見は少し違う。
「そんなに点を取っている割に、絶対的ストライカーとして認識されていないのではないか」
 もっとわかりやすく言えば、
「あんまり目立ってねえんじゃねぇ?」

 ラトビア戦後のニュース記事にしても、ネット上のサッカーファンの意見としても、岡崎の2得点よりも本田の1得点、香川の2アシストのほうが目立っていたのではないか。あるいは、点を取らなかった乾や大津のほうが扱いが大きかった気さえする。
 どういうことであろう。
 シュツットガルトが地味なチームなのか。イケメンと見なされていないからか。岡崎が2試合に1点を取ることは、代表戦で日常の光景と化していて、「あ、岡崎ね」とスルーされているのか。インタビューで特に面白いことを言わないからか。
 岡崎にオーラが無いとは、プロ入り前の恩師にも指摘されていたような気がする。数字上はエースストライカーの割に、そのへんの兄ちゃん的な雰囲気しか感じられないところがある。

 岡崎を語ろうとするなら彼のプレーを見るに如くはない。ラトビア戦を岡崎中心に見直してみた。
 前半、岡崎はワントップの位置に入った。2列目は左から香川、本田、清武。
 岡崎はラトビアの4-4ラインの中間に立った。両手で今ボールをくれ、という動作をするが、無視される場面が目立った。それでもたまに後ろからボールを受けると、ディフェンダーにつぶされた。ハイボールが来ればヘッドで競るが、大抵は競り負けてラトビアボールになった。
 ボールキープが出来ず、日本の攻撃に役立っていなかった。
 それが時間が経ってくると、裏への意識を見せてラトビア4バックにプレッシャーをかける場面が見られるようになった。ディフェンダーを引き連れてスペースを空け、香川や本田がそのスペースを使うようになってきた。ラトビアディフェンスは次第に混乱してきた。ザッケローニ監督が前半残り15分くらいからスムーズになって良いプレーが出た、と言っていた、その15分だ。
 岡崎の1点目は偶然性が高いものだ。内田のシュートがアウトに外れ岡崎の前を通ったところに、彼が足を伸ばしたもの。内田にしろ岡崎にしろ、狙っていたプレーではない。ただ、ここで咄嗟に足を伸ばせる人間、伸ばそうという準備の出来ていた選手でなければ、点は取れない。それはストライカーとして重要な資質だ。

 後半、前田遼一が入って、岡崎は2列目の右、代表の通常位置に入った。ここから岡崎は生き生きとプレーできるようになった。
 前田遼は大きいし体も強い。ハイボールに競る時、岡崎なら競ったラトビアディフェンダーが頭でボールコントロール出来る。しかし、前田遼が相手だと競り勝ってもボールコントロールが出来ない。ラトビアディフェンダーが落としたボールを本田らが拾う場面があった。
 前田遼がキープ出来れば、岡崎ら二列目は前を向ける。岡崎の2点めは前田遼が踏ん張ってキープして香川にボールを渡し、その隙に裏へ飛び出した岡崎に香川がボールを送った所から生まれた。

 一番前の選手がボールをキープして、という現在の日本代表の攻撃のやりかたをするなら、前田遼がワントップの第一候補になるのだろう。前田遼がいないなら、本田がその位置に入ったほうが良い。ある程度上背があり、体の強い選手が入る必要がある。広島でワントップに君臨する佐藤寿人が代表になかなか呼ばれないのはこのあたりに理由があるのだろう。
 岡崎がワントップに入るなら? 彼は前田遼ではない。ディフェンダーの間でボールを受けてもつぶされる。体の強さが無い。止まっていては彼の良さが出ない。岡崎がワントップに入るなら、動くことだ。ディフェンダーと駆け引きし裏を狙う。裏を狙うと見せてディフェンダーを引き連れてスペースを作る。前半残り15分で見せていたプレーだ。
 それならチームとしてボールをどうキープするのか。そこは本田にまかせればいい。キープ位置をトップから二列目の真ん中に変えて、つまり代表のやり方を変える必要がある。変えないなら、岡崎ワントップは無い。それとも岡崎は岡崎なりのキープ方法を新たに編み出さなければならない。

 ところで私は後半の岡崎を見て、オーラが無いのが案外武器なのかな、などと考えていた。
 代表の攻撃は、長友と香川のいる左サイドが主体になる。相手のディフェンダーはそのサイドに引きつけられる。オーラの無い岡崎は忘れられる。その岡崎がいるサイドにボールが飛んでくる。
 消えていた岡崎がそこから突っ込んでくるのだ。そうやって岡崎は、いつの間にか31得点を重ねていたのだろう。

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