日本女子2-1フランス女子 運と偶然と必然と

 フランスは2-0で日本に勝った親善試合の時のように、日本に対してプレスから入るのかと思っていた。しかしむしろ後ろに構えて日本にパスを回させる策を取ってきた。その構えたフランスの中に、日本はボールを入れられなかった。ポゼッションは出来てもシュートを打てない。むしろ奪ってシュートに結び付けているのはフランスのほう。フランスの策は成功していた。
 その策が前半32分、日本のセットプレーで崩れた。センターサークルから少し前に出たぐらいの長い距離だったので、ここから狙うのか、と当初は不思議に思った。ボールはゴールキーパーの前で落ちた。熊谷が迫って来る。フランスGKブアディはボールを掴み損ねて落とした。そこに大儀見がいて流し込んだ。

 飛び出したブアディがわかりやすいミスをしたことを幸運、そこに大儀見がいたのは偶然、と取ることもできる。しかし、飛び出す癖のあるブアディに対し、ぶれる取りにくい球を蹴ったと宮間は言い、取り損ねると予測してそこにいたと大儀見が言う。
 運もあった。偶然もあった。どちらに転がるかわからないそうしたものを、こちらに引き寄せるスカウティングと作戦と技術があった。いりいろなものが交錯した先制点だった。

 宮間から素晴らしいボールが来たので合わせるだけでした、と二点目をヘディングで決めた阪口が言う。合わせるだけでゴールキーパーの逆を突いて右隅に飛ぶものだろうか。それにも技術があり、その技術を成り立たせた練習、恐らくは何年十何年の蓄積のある練習、がある。その練習でディフェンダーよりもコンマ何秒か出しぬいた。
 90分間の勝負がコンマ何秒の差で決まるのだが、その裏には十年単位の蓄積があって、さらに勝ちたいという意欲がある。
「ジョ ソイ カンペオーン」
 ふと、『がんばれ元気』、の科白を思い出した。勝ちたい意欲が少し日本が上回っていたと佐々木監督が言ったが、実際どうだったんだろう。よくわからない。日本が実力でたくさん上回っていてフランスが意欲で少し上回っていた、ということもあり得るかもしれない。ひとつわかっているのは、佐々木監督がそういう表現を使いたかったということだ。日本の選手達の意欲をほめたい、と。

 2-0にしてから日本は押しまくられ、1点を返され、さらにPKを取られた。PKを外したブサグリアには、厳しい所に蹴らなければならない、という心理的圧力があっただろう。福元が逆に飛んでいたが、その福元の動きを読んでいる余裕はなかった。
 フランス側からすれば、勝てた試合だ。負けていたかもしれない試合で勝った日本からすれば、指揮官が勝った理由を戦術や技術や体力やコンディションよりも精神力に求めたくなるのは当たり前かもしれない。

 後半の圧倒された展開に、ロスタイムに点が入らなかったドーハの悲劇のようだ、とも思った。
 どちらに転ぶかわからない試合で、何事かが上回ったから日本は勝ったのだ。
 ドーハと比べるなら、上回ったのは、勝ちたい気持ちより勝ってきた経験かもしれない。

この記事へのコメント

エスカルゴ
2012年08月09日 21:28
後半最後の20分ぐらいは圧倒的にゲームを支配され、もしPKが決まって延長になっていたら、フランスがほぼ間違いなく勝っていた試合でしょう。シュート数もフランスに圧倒され、日本は「サッカーで負けて、試合に勝った」内容だったと思います。しかし、ほんのわずかな要素で日本が勝った。その差は、なでしこがフランスのGKの癖を徹底的に研究していてそれを完璧に実行したこと、福元が絶好調で何度も難しいシュートを止め、PKでは相手に心理的プレッシャーを与えていたこと、フランスのPKキッカーはキャプテンマークを腕に巻いていたが、最初のゲームキャプテンが交代し、次のゲームキャプテンも交代し、3人目のゲームキャプテンで、自身がプレッシャーを感じていたこと、フランスがそれまで(近年)ビッグゲームで決勝まで行ったことがなかったこと、チーム全体の金メダル(決勝進出)に対するモチベーションの強さの差、ぐらいだったのではと思いました。大一番の勝負はいつも紙一重ですね。
水谷秋夫
2012年08月10日 17:53
おっしゃる通り、紙一重ですね。
決勝は紙一重で負けてしまったので、がっくりきているところです。

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