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<<   作成日時 : 2018/05/09 18:14   >>

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「まさか、こんなところにチバクラゲがいるとは思わなかった。
 ぼくはたまたま、中銀スタにサッカーをしに来たチバクラゲに左腕を噛まれてしまったのだ。当然、静脈は切断された。真赤な勝ち点が、とめどもなく流れ出した。
 ぼくは出血多量で昇格どころか降格するかもしれない。一刻も早く、新監督を捜さなければならないのだ。
 しかし、不案内なこのJ2で、新監督を捜すのは容易なことではない。しかも切断された血管の切口と切口がずれないよう右手で、くっつけて合わせていなければならないので走りまわることができないのだ。
 少しでもずれたりすると、たちまち勝ち点が失われてしまうのだ」

「もしもし、この近所に新監督はありませんか。ぼくは必死になって新監督を捜しているのです」
「すると、お前さまは新監督を捜しているのだね」
「あなたに義侠心というものがあるなら、ぼくを新監督へ案内して下さい」
「なるほど、きみの言わんとする意味が、だいたい見当がつきました。きみは、こう言いたいのでしょう。新監督はどこだ!」
「悪質な冗談はやめて下さい。ぼくは降格するかもしれないのですよ。ほら、ぼくのユニフォームはだんだん蒼褪めていくではないですか」
「ねッ、おしえて下さい。新監督はどこだ!」

「そうだ、J1へ行けば新監督があるかもしれない。おお、そうじゃ」
「なんて歩きづらい道なんだろう。これでは、ぼくの気持ちはますますあせるばかりではないか」
「ほら、もう蝿がたかってきた。ぼくのクラブは腐りかけているんだ」

「やあ、ちょうどよい時に来てくれた。J1までやってくれ」
「どうぞ」
「しかし、この車はもと来た方向へ走っているではないか。
その確かな証拠は、バックミラーを見たまえ。
J1がどんどん遠くなっていくではないか」
「目を閉じなさい。そうすれば、後へ走っているような気持ちになるでしょう。
こういう法則は小学校で、ちゃんと教えているではありませんか」
「そうだっけ。ぼくは淡々としなければいけないのだ。
キミは千葉犬のくせに命の恩人だ」

「おや、風鈴だ。夏はいいものですね。さわやかな風鈴の音を聞きながらドライブをするなんて
こういうところをひと目、会長にみせたかった」
「さあ、つきました」
「アッ!、ここはもとのJ2ではないか」
「ああ、ぼくはなんて無駄な時間をつぶしてしまったのだろう」
「よし、こうなったら徹底的に新監督を捜すぞ。
いや、この場合テッテ的というのが正しい文法だ」

「ちくしょう、サクマばかりではないか」

「おじいさん、かくさないで下さい。
このJ2にはたしかに新監督があるはずです」
「どんな新監督を捜しとるのかね」
「攻撃的な人です。できたら安い人が絶対必要なのです。
そして、クラブハウスの一室で開業していたらなお好都合なのです」
「すると、うちのクラブハウスにいるウエノのことだね」

「おじいさん、儲けましたね」
「このクラブハウスはドロー飴の製法特許で建てたものでしょう。
たしかにドロー飴は新機軸です。
うちの会長も昔、考えていたものです」
「ギクッ」
「もしかしたら、あなたはうちの会長さんではないですか」

「ねっ、じつはそうなんでしょう。
ぼくが生まれる以前の社長さんなのでしょう」
「これには深―いわけがあるのです。
シクッ、シクシクシク」
「どんなわけです。教えて下さい。
「それにはドローアメの製法を説明しなければならないのです。
けれど、それはできない相談です」
「なるほど、それではききますまい」
「その秘密は、きっとこのヨシダさんのデザインにあるのでしょう」
「その通りです。三連勝ではあっても、実はドローなのです」
「その証拠に、ほら、ポキン。愛媛ドロー」
「なるほど、ポキン。千葉ドロー」
…………………………………………
「ポキン。山口ドロー」
「ではごきげんよう」
「達者でなァ」
「やれやれ、ようやく新監督をみつけることができた。
でも考えてみれば、それほど降格をおそれることもなかったんだな。
降格なんて、真昼間にバクスタのほうからだんだんと
観客が減っていく恐怖と比べたら、どうってことないんだから」

「監督! シアイをしてください」
「ここは、サポのくるところではありません。
私は監督ですもの」
「お願いです。そんなこといっている場合ではないのです。
ぼくは降格するかもしれないのですよ」
「わかりました。では熊本に連れてってあげます」
「ちょっと待って下さい。
敵地で四点取るシアイをするのですか。そんな無茶なッ」
「あなたはテンプレな人ですね」

「どうやら成功したようです」
「そのねじは締めたりしないでください。
得点の流れが止まってしまいますから」
「あなたは失点の才能もあるんですね」
「それはレノファ方式を応用したものです」

「そういうわけでこのねじを締めると、ぼくの左腕はしびれるようになったのです」



                       元ネタ つげ義春「ねじ式」

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